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更新日: 2021年7月27日

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[再掲]静岡県自転車競技コラム/タイムトライアルとは(7月28日開催)

注:自転車ロードレースの沿道については、観戦自粛となりました。

本記事は、2021年2月に公開したものです。

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自転車競技(ロード)の個人タイムトライアル(TT)は、出場選手が一人ずつ出走してゴールタイムの早さを競う種目です。一般的なロードレースが一斉スタートで行われ、チーム単位の戦略と戦術、また選手間の協力や駆け引きがレース展開を左右するのに対し、単独で走る個人タイムトライアルは純粋に個人の走力を競うものになります。東京オリンピックでは男子が44.2km、女子は22.1kmの距離で行われます。

たった一人の孤独な戦い

個人タイムトライアルでは、各選手がおおよそ1分以上の間隔をおいてスタートしていきます。途中で前の選手に追いついても後ろについて走ることは禁止されており、他の選手をペースメーカーや風よけに利用することはできません。

通常はツール・ド・フランスのような数日間にわたって行われるステージレース(毎日のレース「ステージ」の合計タイムで総合順位を競う)の中の1ステージとして組み込まれることが多く、単独のレースとして行われるのは選手権大会(各国選手権、大陸選手権、世界選手権)、そしてオリンピックなどです。世界選手権では1994年から、オリンピックでは1996年のアトランタ大会から採用されました。ちなみにオリンピックではそれまで、4人のチームごとに走るチームタイムトライアルが行われていました。

通常のロードレースでは上り坂やゴール前におけるダッシュ力が勝敗を分けることが多いですが、個人タイムトライアルではレース時間全体を通じて高い出力、高いスピードを維持できる能力が重要になります。必然的に筋肉量が多く出力の絶対値が大きい、大柄な選手が上位に食い込みやすい種目になります。とはいえ通常のロードレースと同様に競技場でなく既存の道を使って行うため、選手間の有利不利はコースの設定によって変化してきます。

東京オリンピックのコースは?

東京オリンピックでの個人タイムトライアルは、ロードレースから数日をおいて、ロードレースのゴール地点である富士スピードウェイを会場に実施されます。サーキット内だけでなく周辺の道路も使って1周22.1kmの周回路を設定。女子は1周、男子は2周で行われます。ゴールタイムは女子が30分、男子は1時間前後になると思われます。

特徴はアップダウンの多さでしょう。富士スピードウェイは富士山の麓、標高約550mに位置しており、そもそも斜面上に立地しています。このためコースはサーキットの中も外もほぼ上りか下りとなり、完全な平坦路がほとんどありません。コース1周あたりの獲得標高は約423mで、単純に半分が上りと考えると平均勾配は3.8%。本来個人タイムトライアルを得意とする、大柄な選手には少々辛い上り坂になるかもしれません。

一方で下りの速さも重要なポイントです。サーキット内外のテクニカルなコーナーを、できるだけ空気抵抗の少ないフォームを保ちながら、スピードを落とさず駆け抜けなければなりません。もちろん転倒してしまえば致命的なタイムロスとなるので、ギリギリのラインを攻めきれるテクニックと集中力が要求されます。下りの最高速度は時速80kmを超えると思われ、風圧と恐怖心の壁を切り裂きながら走る選手のスピードに注目です。

上りと下り、どこでタイムを稼ぎにいくかは、選手の特性によって異なってきます。大会ごとにコースに合わせてレースの組み立てを変えて走ることが、ロードレースの醍醐味となっています。

空気抵抗を抑えるスペシャル機材を使用

自転車のロード競技は「空気抵抗との戦い」とも言われています。ロードバイクの速度域となる時速40km以上では、走行抵抗の9割以上を空気抵抗が占めるため、これをいかにして減らすかが大きなポイントとなるからです。通常のロードレースでは他の選手の後ろを走って空気抵抗を減らす「ドラフティング」が基本ですが、これが使えない個人タイムトライアルでは、選手自身の空気抵抗を抑える工夫がより重要になってきます。

タイムトライアル写真3

機材だけでなく選手にも空気抵抗を抑えるフォームが要求される=2016年全日本選手権

 

個人タイムトライアルでは深く前傾した空気抵抗の少ないフォームで乗る、専用のタイムトライアルバイクを使います。ハンドルにはツノのように突き出た「DHバー」が付けられ、スキーのダウンヒルのように腕を折り畳んだ形で走ります。自転車本体の空気抵抗も極限まで抑えるために、正面から見た際の面積を小さくした平らな車体、空気をかき回すスポークを少なくしたバトンホイールや、スポークがまったく無い円盤状のディスクホイールが用いられます。ウエアやヘルメットも徹底的に空気抵抗を抑える工夫が凝らされています。

タイムトライアル写真2

ハンドル部分の周辺も空気抵抗を極限に抑えるデザイン=2018年、ツール・ド・フランス

 

1時間走ってほんの数秒差、時には1秒以下のコンマ数秒差で順位が変わることもある個人タイムトライアルでは、文字通り1秒を削るためにさまざまな試みが行われており、注目ポイントの一つになっています。機材メーカーの開発競争も盛んで、オリンピックの大舞台では最高の機材を投入してくるに違いありません。

タイムトライアル写真1
タイムトライアル競技は最新鋭の機材が投入される=2018年、ツール・ド・フランス

 

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